フィットネスのためにキックボクシングを始める方は、キックボクシングに脂肪燃焼（ダイエット）や体力向上、ストレス発散を期待されることが多いようですが、キックボクシングは身体の機能向上という点でも効果的なエクササイズになります。

今回は、ファンクショナルトレーニングとの関わりから、キックボクシングの運動効果について説明します。

 

 

身体の機能を向上させるファンクショナルトレーニング

 

近年、「ファンクショナルトレーニング」が注目されています。

ファンクショナルトレーニングとは直訳すれば「ファンクション」＝「機能」を獲得するためのトレーニング。

スポーツや日常動作において身体の機能を高め、効率的な動きを引き出す〜簡単に言えば「動ける身体」を作ることを目的にした〜トレーニングです。

 

立つ・歩くなどの基本的な動作であっても、身体の構造に適った動きができないと、疲労や痛みが生じ日常生活のパフォーマンスが低下してしまいます。

例えば、体幹のインナーマッスルを適切に使わず、背中を丸めて座る習慣が身についてしまうと、背中の張りや腰痛を引き起こします。これでは痛みや疲労感で集中力が出せず、仕事のパフォーマンスは落ちることでしょう。座るという動作を最適に行うためには、体幹の筋肉（腹直筋などのアウターマッスルや腹横筋などのインナマッスル）が適切に使われるのはもちろんのこと、脊柱や肩甲骨などのアライメントも関わってきます。

このように私たちの体の動きは筋肉系や骨格系そして神経系がシステムとして働くことで生み出されます。

そこで日常動作も含めた身体の動きを最適化し、パフォーマンスを向上させようというのが、ファンクショナルトレーニングです。

筋トレとファンクショナルトレーニングの違い

一般的な筋トレの方法や効果と比べるともっとわかりやすいかもしれません。マシンを使った筋トレは軌道が安定するので、特定の筋肉に負荷をかけることができ、筋肉の発達を促します。

しかし、この動きは日常の動作やスポーツの実際的な動作とは異なるので、〝身体の使い方〟のトレーニングとしては最適ではありません。

例えば、脚を鍛えるレッグプレスマシン。シートに座って、脚でパットを押すマシンですが、背もたれでサポートされているので体幹に過剰なストレスをかけず、脚の筋力の発揮に集中できます。そのおかげで、体重よりはるかに重い負荷を操ることもでき、ターゲットである脚の筋肉量増加には効果的です。

 

しかし、スポーツや日常生活の動きを考えた場合どうでしょう？背中を何かにサポートしてもらいながら動くことはまずありませんね。

スポーツや日常動作では、自分の体重をコントロールしつつ、刻々と変化する状況に反応しながら動きを行っています。レッグプレスは、自分の前方に脚を押し出す一方向の単純な動きの反復運動ですが、スポーツや日常動作は、多方向の複雑な動きの中で自体重をコントロールすることになります。そうしたスポーツおよび日常動作のパフォーマンス向上のためには、多くの筋肉や関節を使い、身体を連動させて動かすスキルが求められます。

 

キックボクシングは「体幹」で蹴る

スポーツや日常生活で基本となる姿勢は立位です。立位で歩く・走る・飛ぶ・蹴るといった動きを機能的に行うためには、「体幹」が安定していなければいけません。体幹が安定することで、腕や脚の動きの自由度が増します。サッカー選手が熱心に体幹トレーニングを行っていることからわかるように、巧みに素早く動き・蹴るためには体幹の安定がとても重要なのです。

これは、キックボクシングも同じですね。キックするとき、軸足の真上に重心を乗せて骨盤を引き上げることができれば、蹴り足は自然に持ち上がります。でもこの時、体幹が不安定だと重心がブレてしまい、スムーズに足が上がりません。また軸足に重心が乗らないブレた状態でキックをすると、軸足が生んだ力を効率的に蹴り足に伝えることができず、力強い蹴りになりません。

初心者ほどついつい足の力で蹴りがちですが、体幹と足の連動がうまくできないと、不安定で弱いキックになってしまいます。強くてかっこいいキックのためには、体幹と全身のコーディネーションが大切なのです！

このようにキックボクシングの動作は、多くの筋肉や関節を協調させて動きます。特に体幹と足の連動、体幹と肩甲骨・腕の連動を高めていくことで、他のスポーツのパフォーマンス向上や日常の動作につながる「良い動き」を引き出すことができます。キックボクシングはファンクショナルなエクササイズとしても魅力的な運動なのです！

まだキックボクシングをしたことがないという方はぜひ、眠った身体の機能を目覚めさせ、かっこよく蹴り・かっこよく打ってみませんか。その先には機能的でかっこいい体に生まれ変わったあなたが待っています。